社会福祉法人いぶき福祉会/支援員
加納優汰さん
社会や地域にとっての 「ふつう」をつくりたい。

この先もなくならない “揺れのない仕事”。

 高校生の頃にホテルで宿泊した際、ホテルマンのスマートな所作に憧れて、漠然と「人と接する仕事がしたい!」と思うようになりました。卒業後は岐阜でバス会社に就職し、添乗員として忙しくも充実した日々を送っていました。4年ほど働いた頃、東日本大震災が発生。自粛モードで仕事が激減したことをきっかけに、観光業はとても揺れのある仕事だということに気づき、少しずつ転職を考え始めました。
 転職先は「人と接する仕事」にはこだわりながらも、できれば揺れのない、この先なくならない仕事にしたいという思いがありました。ある日「障害のある方と接する仕事」というのを見つけて、なんとなく興味を持ちました。前職で障害者施設の団体旅行の添乗を経験したときに、なんとなくその雰囲気を微笑ましく見ていたので「もしかしたら自分に合うかもしれない」と感じ、22歳のときに「いぶき福祉会」へ転職しました。まずは支援員として、知的障害のある方たちが草木染のストールをつくるチームへ配属になりました。

自ら考え、動いて 経験して学んでいく。

 もともと体育会系で元気だけが取り柄だったので、前職の添乗員はハキハキとした元気な受け答えがとても好まれていました。これが自分の色だ!と思って、ここでも同じように対応をしていたら、声が大きすぎてしまって仲間(利用者)を怖がらせてしまったんです。働き始めた当初は、彼らがどんなときに怒ったり、気分を悪くしたりするのか全く掴めず、自分のせいで部屋が揉めている状態がとても怖かった時期がありました。
 そんなとき、当時のチームリーダーの立ち回りにはとても助けられました。僕の関わりがきっかけで怒ってしまった仲間と、仲直りするチャンスをくれたんです。その人から僕を引き離すわけでもなく、間に入るわけでもなく、マンツーマンでやりとりを繰り返すチャンスをくれて、いつも近くで見守ってくれました。時間はかかりましたが、最終的には仲直りの握手ができました。そこまで解決したあとに、なぜ失敗したのか、解決にはどんな方法があるのかを教えてくれて…。仮にその答えを先に聞いてしまっていたら、リーダーのやり方を真似るだけで、何も得ることなく終わっていたと思うのですが、挑戦させてもらえたことで、何かひとつ掴めたような気がしました。

彼ら自身が 誇りを持てる仕事を。

 草木染のチームで4年間働いたあとに異動し、現在は仲間と一緒に畑仕事をしています。種を蒔いて畑の世話をして、作物を育て、収穫して…という、農業の一連の流れを、仲間5人と僕1人という、6人の小さなチームで行っています。
 働き始めてすぐの頃は、仲間に対して「手助けしないと、何もできないんじゃないか」なんて思ってたんですよね。この仕事は、彼らができないことを「やってあげる」仕事だと。今思うと失礼極まりない話ですが、当初はそういう感覚があって…。でも、実はそれこそが差別。当時の僕は、仕事を終えた仲間に「ありがとう」って無意識に言ってたんです。そんなとき、先輩から「彼らの仕事なんだから、お礼なんて言わなくていい」と言われて、ハッとしました。自分は彼らを尊重できていなかったのではないか、と気づきました。
 仲間には「自分たちがつくった商品なんだ」という誇りを持って仕事をして欲しいと常々思っています。そのために、私がそれぞれの長所を見極め、最も力を発揮できる役割を与えることで、達成感を持ってもらえる職場にできたらいいな、と思っています。私もここに来てまだ4年なので、僕なんかよりも上手で丁寧な仕事をしている仲間はたくさんいますし、むしろ僕の方が日々彼らに育ててもらっているような毎日です。

地域に、社会に馴染む 「ふつう」をつくりたい。

 この仕事は、人と深く関わる仕事です。言ってしまえば、相手の人生を変えてしまうことだってできます。たったひとつの失敗がとても重いです。マニュアルも正解もない仕事に難しさも重さも感じますが、その分、大きなやりがいも感じます。以前、人事異動のときに、ある仲間が泣いてくれたことがありました。その涙を見たとき、微力ながら彼の中に何か残せたのかもしれない、と、小さな自信にもなりました。
 福祉というのは揺れのない、なくならない仕事。これからも、絶対に必要な仕事です。だからこそ、彼らが地域にもっと馴染めるような働きかけをしていきたいと思っています。差別をしていないつもりでも、なんらかの抵抗を持っている人も少なくありません。でもそれって、仲間たちの姿を知らないだけ、どう接していいのかわからないだけなんだと思います。彼らがもっと気兼ねなく地域に出て行けるような、社会にいて当たり前の存在になれるような、そんな「ふつう」をつくることが、僕の夢です。とてつもなく大きなテーマですが、僕のような支援員でも一歩ずつ進んでいける夢だと信じて、日々仲間たちと一緒に成長していきたいと思っています。

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